年越し宗谷岬ツーリングにおける体温管理
はじめに
寒い環境に身をおいても我々は生存できる。
もちろん冷たい風を防ぐアウターや、温かい空気を保持するダウンは重要であるが、それらも人体の体温発生なくしては意味をなさない。
外温の影響を受ける変温動物と異なり、我々恒温動物は体内で熱を生じさせている。そしてその発生する熱が不足して、外温に対して負けてしまったときに「ひどく寒く感じる」。
では、人体が体温を発生させるのはどのようなメカニズムだろうか。
体温はどのようにして発生するか
人間の体温は、エネルギー代謝や環境との熱交換によって維持される。
以下の3つの要素が体温調節の基盤として重要である。
基礎代謝
体が生命を維持するために必要な最低限のエネルギー代謝。
心臓の鼓動や呼吸、体温維持などの基本的な機能に使われ、総エネルギー消費量の約60~70%を占める。
食事誘発性熱産生
食事の摂取中、あるいは摂取した後、身体が温かくなることはないだろうか。
これは消化や吸収により熱が発生するために生じる。
摂取したエネルギーの約10%程度が利用され、食事内容や成分により変動する(特にタンパク質が食事誘発性熱産生を増加させる要因となる)。
筋肉による熱産生
筋肉活動に伴い発生する熱。
運動時や体が寒さを感じた際に筋肉が収縮し、熱を生成して体温を上昇させる。特に運動や震え(シバリング)は体温調節において重要な役割を果たす。
空腹時に寒く感じる理由
お腹が減ったときに体が寒く感じるのは、主に以下の理由による。
影響度順に並べた。
エネルギー不足による代謝低下
空腹時には体内のエネルギー源である血糖値が低下する。血糖値が低いと、基礎代謝を支えるエネルギーが不足し、体温維持のための熱産生が抑えられる。結果として、体が寒く感じる。食事誘発性熱産生の欠如
食事を摂取すると、消化・吸収の過程で体内で熱が発生する。
この熱産生は体温維持に寄与するが、空腹時には食事がないため、このプロセスが働かず、寒さを感じやすくなる。血流の変化
エネルギー不足時には、体は重要な臓器(脳や心臓など)に血流を優先的に送る。
この際、手足や体表など末梢部分への血流が減少することで、冷たさや寒さを感じる。ホルモンバランスの影響
空腹時には、血糖値を上げるために特定のホルモンが分泌され、血管を収縮させる。血管が収縮することで、熱が体外に逃げにくくなる一方、末梢部の温度が低下し寒さを感じることがある。エネルギー節約モードへの移行
空腹が続くと、体はエネルギー消費を抑えるための「省エネモード」に入る。この状態では筋肉活動が抑制され、熱産生も低下するため、寒さを感じやすくなる。
この中でも、特に上位に上げた3つを記憶しておくべきである。
体内のエネルギー不足が発生すると、理論1に記載した基礎代謝と食事誘発性熱生産が不足すし寒さを感じる。
この状態でも筋肉による熱生産は可能ではあるが、効率が悪く、また筋肉を分解して不足するエネルギーを補うため、疲労感や筋肉量の低下を招く。こうした行為は避けるべきである。
体温管理の方法
ここまでの内容で、体温を維持する基本は食事であることを記載した。
寒い時期にツーリングする際の生存戦略は、エネルギーの摂取量と、その在庫管理である。
特に、食事で接種したエネルギーが切れるタイミングをコントロールすることが重要になる。
就寝時の体温維持
就寝時の服装やシュラフについては別記するとして、ホテルなどの快適温度以外で就寝する場合には、食事による体温確保を積極的に利用する。
推奨事項として、消化しやすい糖質やタンパク質を含む軽食を摂取することで、体内のエネルギー源を補充し、基礎代謝による発熱を助ける。紅茶などの温かい飲み物も、熱の伝導効果があるためおすすめである。
就寝前に十分な食事を接種し、体温を維持するためのエネルギーを蓄えることにより、このようにシュラフ一枚で就寝することが可能になる。