北の道便り: 矢羽根って?
矢羽根の役割
矢羽根(やばねと読む)は、積雪の多い北海道特有の文化である。
正式には視線誘導施設に分類され、「固定式視線誘導柱」という。
積雪期の悪天候時に、車道と路肩の境界を示すことが主な役割である。
上の画像の通り、特にホワイトアウトした時や、夜間などの視界不良時の視認性向上に真価を発揮する。
矢羽根の歴史
矢羽根の歴史を簡潔にまとめる。
なお、世代分けについては筆者独自のもので、特に他文献との整合性は考慮していない。
第1世代(1945年頃〜1965年頃)
矢羽根の前身に当たるものは、古くは第二次世界大戦の頃から利用されて来た。
初期には笹の葉を束ねたものに白黒の平行縞模様を付けた簡易的なもので、除雪車の目印として使用されたことを発端とする。
注:戦後間もない頃の北海道では、アメリカから借りた除雪機や海、溝用のトラクター、また戦車改造した除雪車が利用されていた。
第2世代(1965年頃〜1980年代)
この頃に現在の矢羽根型が誕生した。
すなわち、逆L字型の支柱に矢羽根を付ける設計であり、視認性や安定性を向上した結果、除雪車に倒されにくくなった。
第3世代(1980年代〜2000年代初頭)
固定式となり、通年で使用されるようになったのは、ちょうど交通戦争の時代である。
除雪作業だけでなく、一般ドライバーの視線誘導にも活用されるようになり、反射式タイプの導入なども行われた。
第4世代(2000年代中頃)
高輝度LEDの使用による視認性の向上を狙い、矢羽根の表面に無数のLEDを埋め込んだ型が出てくる。
北海道開発局により1980年代の後半には大方研究され、視認性や電源供給などの観点を検討の上現在のLED方式に落ち着いている。
視認性の観点では、灯火方式(白熱球、ハロゲン球など)や、灯体の配置、配色などが検討された。
生産された際の研究状況、開発メーカーにより特色が異なる。
次世代の矢羽根
現在の矢羽根はLEDを採用した自発光式が主流。
そんな自発光式矢羽根の改良が進められている。
ソーラー式
小型のソーラー発電用のボックスが支柱に備え付けられ、外部からの電源供給を不要とするもの。
北海道の道路は電源供給困難な地域もあり、そうした地域にも安心安全を供給する。
同期式
規則正しく連なって発光している複数の矢羽根は、同期式である。
最近のオホーツク沿岸はほとんどがこの方式になったように思われる。
JJY式とGPS式(GNSS式)があり、どちらも電波により時刻情報を受信し、発光間隔を同期する機能を備えたものである。
(電波を受信している限り、全道で同じタイミングで点灯しているのかもしれない。遅延タイマーなどあるのだろうか。)
ハイパワーLEDによる光柱
ハイパワーLEDを利用して、矢羽根の裏面から鉛直下向きにLEDを照射する方法も考案された。
(出典: ハイパワー LED を活用した新たな視線誘導対策)
ビーコンライナー付属型
近年は、レーザー光を利用したグリーンの光線で道の端を示すものもある。
レーザー原理を利用しており、LED式に対して指向性・収束性のアドバンテージがある。
厳密には矢羽根ではなく、矢羽根と併用して、より路肩をわかりやすくしたものである。
温度センサーによる低温時自動点滅機能
温度が低下する夜間に自動で点滅を開始する機能を持ったものもある。
矢羽根ギャラリー
名前は趣味でつけてます。
レア度教えて下さい。
大型4連LED矢羽根
9連LED矢羽根
小型LED3個が横一行に配置され、矢羽根の棒の部分に縦3つに並べたもの。
21連LEDソーラー矢羽根
LED21個型。
自発光式のソーラーボックスが反対向きに設置されていることがわかる。
31連LEDソーラー矢羽根
景観配慮型矢羽根
景観配慮型。
黄色と紺色の縞模様で景色(森)に溶け込むデザイン。
景観配慮型緑色16連LEDソーラー矢羽根
景観配慮型+緑色灯体の夜間発光。
黎明期の研究では赤色が最も視認性良しとされていた。
本州での例
参考文献
- 寒地土木研究所: https://www.ceri.go.jp
- https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/library/hist/03.html
- https://catalog.express-highway.or.jp/products/p10010419.html
- https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2012/03/020.pdf
- 大蔵製作所: http://ohkura-ss.com/factory/sign_dept.html
- アトム技研:http://www.atom-gkn.co.jp/yabane1c.pdf
- 新生産業:https://shinseisangyo.co.jp/products/st-sa23-24hr/
- GR0000900056_冬期間における自発光視線誘導標の設置効果について