おれたちの宿 "野宿"
はじめに
野宿とは、はたしてどういうものか。
ヤネがない、カベがない。故に風が吹けば寒く、雨が降って起こされることもある。たまに動物が来る。蚊に噛まれる。
でもホテルに泊まるより面倒くさくなく、ネカフェに泊まるより安く、そしてテントを張るより準備が少ない。
そして寝て起きたときに、少しだけ強くなった感が得られる、それが野宿である。
人には、初めての経験がある

初めての野宿がいつだったか。
テントを張ったものなら記憶がある。2015年の夏、初めて原付きにまたがった年__________。
原付で朝から晩まで走ってたどり着いた鳥取県湯梨浜 道の駅・燕趙園。
夜に一人、不気味なトイレの光と、エンジンを掛けたままの大型トラック。うまく張れない3,000円のテント。
初めての道で荷物を積んで300km、車に抜かれながら移動したこともあり、精神的な疲れからかしっかりと寝ることができた。
だがこれが200kmそこらの距離だったら、ひょっとすると寝られなかったのではないか?

2016年4月9日
この日は初めてテントを張らない野宿というやつを体験した。
50ccのリトルカブで小浜から富士まで行った帰り、藤川宿の道の駅脇にあるベンチで、はんぺんみたいな薄いシュラフで、寝た。
それから5月8日。
今度は有名なバイクスポット、針テラス。当時ホットな場所だった。
ここにまたしてもリトルカブで乗りこんで、寒かったからアルコールストーブで湯を沸かしていたらNチビに乗った野郎ども(といっても当時17だったので、相手のほうが年上だと思う)が絡んできて愉快な夜だった。
またしてもベンチ。今度はヤネなし。
明け方、顔がバチバチ叩かれるためおかしいな?と思って目を覚ましたら、シュラフがびしゃびしゃだった。
様々な野宿スタイル

2016年6月11日 富山県にて
旅を始めてからというものの、だんだんと”カン”が芽生えてきた。
大抵の場所なら、ここは快適に寝ることができる、ここは寝られない、と
それはマクロな視点からミクロな視点まで応用可能だ。
マクロな視点、つまり地図の上でどこだったら寝られそうか?
近くに道の駅はあるか、なければ海岸沿いはどうか。営業時間外のバス停はあるか。
ミクロな視点、例えば道の駅のどこで寝るか。
ベンチが良いか、地面が良いか?
ライト、人の導線、目線、それから道路からどれくらい近いか?(騒音や光害の観点)。
自分なりの目利きができるようになってきたら、もはや野宿の達人である。
野宿実行日: 2016年6月11日(著者18歳)
場所: 富山県富山市
気温: 不明
施設: テント、水無し
快適度: ★★☆☆☆
秘境度: ★☆☆☆☆
今となっては信じられないのだが、こんな宿泊も経験した。
フェリーを待っている間、フェリーターミナルでの宿泊だ。
これを野宿と言って良いかは判断が分かれるポイントであるが、究極の無料宿泊である。
野宿実行日: 2016年8月29日(著者18歳)
場所: 北海道 函館市
気温: 快適
施設: 固くも柔らかくもない椅子
快適度: ★★★★☆
異常度: ★★★★★
私の最も愛する島、種子島。
ロケットの打ち上げを見に行ったとき、寝床に困って中種子のA・corpのベンチに忍び込んで宿泊したこともある。

場所は違うがわかりやすいベンチ野宿の写真。

旅をしていれば、どうしても寝られない場所がでてくる。
そういうときは、マクドナルドに入って、座ったまま寝る。中学校で授業中にうたた寝をするときのように。
一度だけ、石垣島のマクドナルドで仮眠を取ろうとしたとき、店内清掃のせいで追い出された事がある。写真が残っていないのが惜しいが、このときは横のスーパーの裏側に行って、スーパーで棚卸しされたあとの段ボールを使って寒さをしのぎながら喫煙用ベンチで一夜を明かした。
旅の常套手段へ

一度野宿を覚えてしまうと、人間はダメになる。
これは夏の北海道。日本海沿いの通称オロロンライン。
北海道は寝床がたくさんあって素敵だ。大地の大きさは、寝床の大きさ。
野宿実行日: 2022年8月14日(著者24歳)
場所: 北海道 オロロンライン
気温: 快適
施設: 地面
快適度: ★★★★☆
異常度: ★★★★☆
雨をも凌ぐ。
北陸、新潟のバイパス沿い。ネカフェがない場所でも寝ることができる。
野宿実行日: 2022年5月1日(著者23歳)
場所: 新潟県 ピアパーク親不知
気温: 快適
施設: 地面、カベ、屋根
快適度: ★★★☆☆
異常度: ★☆☆☆☆
もっとも狂った野宿をノミネートするには野宿した回数が多すぎる。すでにひとつひとつの記憶は薄れてきてしまった。
そんな中でも記憶している狂った野宿を挙げるとすれば、国道345号の真横の歩道で寝たことだろう。
このときは500kmほど雨の中を走り、風邪を引いていていたこともあって適当な場所に寝てしまったと反省。初めて職質を受けた。
野宿実行日: 2018年5月2日(著者20歳)
場所: 新潟県 笹川流れ
気温: 快適
施設: 地面、カベ、屋根
快適度: ★★☆☆☆
異常度: ★★★★☆
上と同じツーリングのとき。
このときも風を引いていた。
野宿実行日: 2018年4月30日(著者20歳)
場所: 北海道 日高
気温: 快適
施設: 地面、カベ
快適度: ★★☆☆☆
異常度: ★★★☆☆
天下の大動脈、国道1号を下に野宿したこともある。
野宿実行日: 2018年4月14日(著者20歳)
場所: 薩埵峠
気温: やや寒い
施設: 地面、モニュメント
快適度: ★★☆☆☆
異常度: ★★★☆☆寒さも防ぐ

ご覧あれ、これは冬の北海道は千歳市である。
晴天の夜中、自作したハンドルヒーターが壊れて指先が凍える思いをして走った。
そうしてたどり着いた場所はサーモンパーク千歳横の公園。
体を十分に温められる栄養を取って就寝。
野宿実行日: 2018年12月29日(著者21歳)
場所: 北海道千歳市
気温: 最低-10.2°C
施設: ヤネなし、カベなし、雪
快適度: ★★★☆☆
秘境度: ★☆☆☆☆
北海道での野宿ネタは尽きない。
こちらは有名な北防波堤ドームでの野宿。
野宿実行日: 2021年12月31日24時以降(著者27歳、徹夜行動)
場所: 北海道稚内市 北防波堤ドーム
気温: 最低-9.8°C
平均風速: 11.9m/s max 24時
施設: 屋根、カベ(半分)、地面
快適度: ★★★★☆
秘境度: ★★★☆☆
こちらは枝幸でバイクが焼き付いたとき。
箱のタイプのバス停で寝たのははじめて。
体温によって少し暖かくなるのが○。
野宿実行日: 2021年1月2日(著者24歳)
場所: 北海道枝幸市
気温: 最低-11.7°C
施設: バス停、結露
快適度: ★★★★☆
秘境度: ★★★★☆
状態異常: 結露が激しすぎて、SOLとシュラフの間に池を作ってしまった
最果ての地、宗谷岬。
ただ、風が激しいことと、足元に当たる風のせいで足から冷えて目が覚めがちだった。
宗谷岬において野宿する場所として、トイレの横は風よけになって良かったが、もう少し足元に雪の壁を作るなどの対策をしたほうがよい。
野宿実行日: 2023年12月31日(著者27歳)
場所: 北海道稚内市 宗谷岬
気温: 最低-9.2°C
平均風速: 11.9m/s max 24時
施設: ヤネなし、カベなし、雪、横トイレ
快適度: ★★★☆☆
秘境度: ★★★☆☆おわりに
野宿という行為のなんと尊いことか。
春は少し肌寒くて風邪をひくし、夏は暑くて虫だらけで寝れず、秋も風邪をひく。
そして冬には凍え死ぬような思いをする。
だが、そういう行為のなかで、自然とつながってはじめて感じられる物があるはずだ。
都会に生きる人間には、ぜひ野宿をおすすめしたい。
(2025年10月10日 著者28歳。秋津のマクドナルドにて)
